研究概要 |
本研究は,耐性菌の伝播が起きると治療が難航し,生命予後に影響しかねない医療器具等の留置が多い易感染患者の入室するICUでの間接伝播の可能性について,気管吸引時の多剤耐性菌の感染リスクを検討し,リスクの軽減可能な看護技術を明らかにし提示することを目的として行った.1)蛍光試薬及びATP(アデノシン三リン酸)量を指標として汚染度を比較した実験室での汚染部位の検討(療養環境、保護具).2)臨床におけるICU入室患者の療養環境の汚染実態の調査(看護師の吸引時の行動観察,意識調査).3)臨床でのICU療養環境を介しての微生物伝播の検討(人工呼吸器装着患者の療養環境,患者の病原体の検討).倫理的配慮については,名古屋市立大学看護学部研究倫理委員会の承認を得た.結果は40人の人工呼吸器装着患者100場面の観察から,気管吸引後のICU病棟看護師の手の高頻度接触部位はリネン,患者装着ドレン,ベッド柵等であった.実験及び観察から汚染が予測された療養環境の細菌検索をしたところ気管吸引を必要とする患者の療養環境の260検体中15検体(5.8%)からMRSAが検出された(リネン,聴診器,ジャクソンリース,人工呼吸器の消音ボタン).その中の2検体(0.8%)は,MRSA感染者ではない患者の療養環境からの検体であった.得られた資料をまとめるのに時間を要した.微生物伝播の検討については,現在まだまとめの途中であるため成果発表にはいたらなかった.看護教育に関しては,国際比較を行う対象となる当大学の感染に関する教育のまとめを行った.
|