研究概要 |
月齢2~5ヶ月の健康な乳児を対象とし、対象宅において、敷き布団の温・湿度を3晩連続測定し春季4例、夏季7例、秋季8例を分析した。乳児の寝床内温度は成人に比べ高い傾向にあったが季節差は見られなかった。寝床内温度に季節差がないのは成人の結果と同じであり,寝床内温度が高いのは乳児の体温は成人に比べ高いことと、体動が少なく熱が逃げないためと思われる。寝床内湿度は季節差がみられ、背部の湿度は春季65.6±8.0(54.0-81.7)%、夏季77.1±10.7(61.6-97.1)%、秋期56.4±11.2(35.5-76.6)%と、夏季が最も高かった(P<0.05)。夏に寝床内湿度が高いのは高い室温下での発汗の影響と考えられる。5ヶ月までの乳児は寝返りができないので、80%以上の高い寝床内湿度が数時間に渡り持続していた。健康な成人では体動のたびに寝床内湿度が変化するため、これは乳児の寝床内気候の注目すべき特徴であるといえる。寝床内湿度や温度が高いもの寝具と寝床内気候との関連をみると、特徴的なのは防水シーツと、成人用あるいは学童用の敷き寝具であった。防水シーツは成人を対象とした研究で寝床内湿度を高めることが判っており、乳児でも同様の現象が起こったと考えられる。乳児用ではない敷き寝具が高い寝床内温度や湿度を引きおこすのは柔らかい厚みのある寝具に身体が沈み込み、熱や水分を寝具の外に逃がせず、寝床内温度や湿度が高められたためと思われる。一方,夏に中わたが綿の布団を用いていた乳児の寝床内湿度が、高湿でなかったのは、綿という吸水性の高い中わたの素材が影響したのではないか。綿布団にシーツというシンプルな寝具の用い方も一因かもしれない。高温多湿を招く寝具の用い方は、乳児の暖め過ぎに寄与し,SIDSの要因や窒息などの事故に結びつく可能性もあり,今後の指導に活かすべき結果である。
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