研究概要 |
本調査は乳がん術後上肢機能障害の予防改善に向けた介入モデルの有効性を測定できる「乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知尺度」(佐藤,2006)の信頼性および妥当性を、特に客観的評価法との関連によって明らかにすることを目的に実施した。2総合病院に通院する乳がん術後1年以内で調査参加に文書で同意した62名を対象(平均年齢55.9歳)に、「修正版乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知尺度」を用いた自記式質問紙調査法および腫脹、肩関節可動域、握力の測定を実施した。その結果、尺度各項目と全体は有意に関連し(r_s=.38〜.69;p<.001〜.01)、Cronbachのα係数は0.88であった。尺度と苦痛の程度(VAS)との相関で妥当性を検討した結果、尺度16項目中13項目が有意な正の相関がみられ(p<.001〜.05)、尺度全体ではr_s=.69で有意な正の相関がみられた(p<.001)。表面妥当性の検討では、4段階評定のうち「弱」から「強」の判断が灘しいと回答した者が3名いた。主観的評価法と客観的評価法の関連では「手術した側の腕を肘を曲げずに横に広げて耳の高さまであがらない」と外転差(r_s=.25;p<.05)、「手術した側の腕を肘を曲げずに横に広げて後ろにそらせない」と水平伸展差(r_s=.28;p<.05)に有意な正の相関がみられた。以上の結果から、「修正版乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知尺度」の信頼性、妥当性は内的整合性、表面妥当性によって確認されたが、客観的評価法と相関がみられた項目は客観的評価法と併用した6項目のうち2項目であった。これは、生活するうえで支障がない程度の上肢機能であれば乳がん体験者は症状がない、または低く評価するためと考えられた。この検討によって、乳がん体験者の術後上肢機能障害をさらに正確に査定するためには、主観的評価法と客観的評価法を併用する必要性が示唆された。
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