本調査は前年度に内容妥当性を検討した「乳がん体験者の上肢機能障害予防改善に向けた介入プログラム」の有効性を、上肢機能と生活機能(上肢障害評価表)、健康関連QOL、セルフケア達成度によって明らかにすることを目的に実施した。対象は乳がんの手術目的で入院し、調査参加の同意を文書で得られた者とした。介入群と比較群は、対象の希望で分類した。介入群には「乳がん体験者の上肢機能障害予防改善に向けた介入プログラム」にそって1.なぜ症状がでるのか、2.腕の変化をみる方法、3.症状の予防改善に向けた生活に関する内容を中心に対象者の疑問に答えながら個別に指導した。比較群は入院した病院の医療者が通常行っているケアを受けた。手術前にはセンチネルリンパ節生検予定者28名に、調査および介入群希望者に介入を開始した。手術後1週からは腋窩リンパ節郭清を受けた8名(介入群4名、比較群4名)を調査し、本調査の分析対象とした。データ収集は聞き取り調査と自記式質問紙調査、および周径、肩関節可動域、握力の測定を手術前、手術後1週、1か月、3か月の4回、縦断的に実施した。治療に関するデータは、診療録から収集した。その結果、介入群と比較群間の年齢、育児や介護の有無、術式、リンパ節郭清範囲などの対象特性に有意差がみられなかった。上肢機能、生活機能、健康関連QOL、セルフケア達成度の比較では、有意差がみられなかった。しかし、健康関連QOLの8下位尺度得点を手術前と手術後の変化で比較したところ、介入群では「痛み」が術前までもどらず、比較群は「心の健康」が術前と比較して低く経過していた。今後は、上肢機能障害以外に実施した個別的なケアを介入プログラムに追加した上で、腋窩リンパ節郭清を受けた対象者数を増やし、縦断的な長期追跡調査が課題である。
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