妊婦や胎児をタバコの害から守るためには、すべての妊婦に禁煙の動機付けを行うことが必要である。また、一般論として禁煙を勧めるのではなく、妊婦各自の喫煙状況を把握した禁煙指導が必要となる。しかし、妊婦に対する質問だけでは正確に喫煙状況を把握することは困難であり、喫煙に関する客観的な情報が必要である。さらに、周囲の喫煙者からの受動喫煙が妊婦や胎児に及ぼす影響も無視できない。妊婦健診では毎回、尿検査を行うため、喫煙状況を簡便に評価できる尿中コチニン検査は妊婦の禁煙指導にとって有用である。また、検査結果を母子健康手帳に記入することで、妊婦のタバコの煙への暴露状況を周囲の人たちと共有可能である。 兵庫県尼崎市産婦人科医会の協力で6つの分娩施設で研究を平成19年9月より開始した。各施設における妊婦健診において以下の研究が進行中である。 1、喫煙にかかわる質問表調査:初回妊婦健診、妊娠20〜23週、妊娠32〜35週、産後1ヶ月の4回の検査を行っている。妊娠途中からのエントリーを認めている。 2、尿中コチニン検査:毎週施設より尿を回収し、大阪大学にてコチニンの半定量検査を行っている。尿中コチニンの測定値は郵送にて1週間以内に各施設に回答される。 3、検査結果の母子手帳への記入と禁煙指導:各施設に回答された検査結果用紙を妊婦に手渡すと同時に、母子健康手帳に結果の記入を行う。また、同時に検査結果にもとづいた禁煙指導を行う。 平成20年2月末で1552尿検体のコチニン検査を完了している。平成20年4月より、各施設に保存している喫煙に関するアンケート結果の集計と妊娠、分娩経過の調査を行う計画である。
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