研究概要 |
妊婦自身の喫煙の申告には虚偽が多く、さらに受動喫煙も妊婦の喫煙として考慮する必要がある。本研究では妊婦尿中コチニン測定を併用した喫煙状況の評価と、検査結果を妊婦と家族に伝えることによる喫煙防止効果の評価を5つの産科医院にて縦断調査した。妊娠前期、中期、末期の3回の妊婦検診時に質問票に回答してもらい、尿中コチニン測定をNicCheck試験紙で行った。検査結果は次回健診時に報告書を妊婦に手渡すと同時に、母子健康手帳に記入した。本研究は研究者所属大学の倫理委員会の承認を受け、調査対象者から文書での同意を得ている。調査は平成21年3月まで行っており、本稿には平成19年9月から平成20年6月までの中間集計結果を示す。対象者1115名の登録時期は初期が582名、中期が325名、末期が208名であり、自己申告による喫煙者は48名(8.2%)、42名(12,9%)、16名(7.7%)であった。一方、尿中コチニン陽性者は203名(34.9%)、98名(30.2%)、70名(33.7%)であった。妊娠初期・中期に登録し、妊娠末期まで追跡可能であった305名について登録時と妊娠末期の喫煙状況を比較した。自己申告による喫煙者は35名(11.5%)から40名(13.1%)に増加していたが、尿中コチニン陽性妊婦は94名(30.8%)から81名(26.6%)に減少していた。自己申告での喫煙者の2倍以上の尿中コチニン陽性者が存在した。尿中コチニンによってタバコの煙の暴露状況を妊婦本人や家族に周知させることにより、尿中コチニン陽性者率は減少した。今後、妊婦の喫煙評価には尿中コチニンを指標とする必要があり、尿中コチニン測定は喫煙防止にも有用である。現在最終集計中であり、集計がすみしだい発表予定である。
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