研究概要 |
平成21年度の研究は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対して,1年後のフォローアップ調査を行い,縦断的に研究をすすめること,1年間の間に増悪した者(気道感染を起こした者)とそうでない者とのベースライン時点の観察内容を比較し,増悪に関連する要因を検討することを目的として実施した。加えて,この1年間に直接援助に携わった看護師を対象として,患者のセルフマネジメントカを高めるための看護援助が在宅酸素導入時にどの程度行われているのかについて,調査を実施した。 1. 分析の結果,ベースライン時の努力性肺活量(FVC),1秒量(FEV1.0),息切れの程度に違いは認められなかったが,1年間の間に増悪した者(気道感染を起こした者;定期受疹日以外で外来受診治療)は,そうでない者に比べ,ベースライン時のコントロール可能性(病気や症状に対する認知的評価)の得点,息切れの対応に対する自信(課題特異性自己効力感)が有意に低かった(p<0.01)。また,増悪した者は,自分のやりたいことができないと評価している傾向が強かった。この結果は,肺機能の状態は同じであっても,自分の状況についてコントロール感を低めている者が,増悪を起こしやすいことを示唆するものであった。 2. 増悪した者とそうでない者で,用いている療養法,病気の目安に用いている症状やサインに違いがあるのかについては,来年度詳細に検討していく予定である。 3. 看護師を対象とした調査では,この1年間に在宅酸素導入患者に対して"セルフモニタリングできるように関わる""息切れを最小限にする日常生活動作の仕方を説明する""ストレスマネジメントの方法を指導する"など,患者の病気や症状に対するマネジメントに必要と考えられる援助を「いつも行った」とした者は2割以下であった。患者のセルフマネジメントカを高める看護援助が十分行えているとはいえない現状が示めされた。
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