研究概要 |
平成19年度は、褥瘡の動物実験モデル作製するため、1)麻酔したラットの腹膜腔に鉄板を水平に挿入し、鉄板を固定してその上の腹壁に金属塊を乗せる方法、および2)手術で腹膜腔にネオジム磁石(20×25×2mm)を挿入して開腹部を縫合し、ラットが覚醒した後に体内と体外の磁石で腹壁を挟む2種類の方法を試みた。腹壁を、約50、100mmHg相当の力で2、3、4時間圧迫した。圧迫開始から12時間、1、3、7日後に腹壁を試料として採取し、凍結切片のへマトキシリン・エオジン染色で傷害を評価した。また、マイクロアレイとリアルタイムPCRで遺伝子発現を解析した。 その結果、2方法とも、圧力と時間が増すにつれて傷害が増加し、皮膚や皮下組織に浮腫が生じて筋層は壊死した。同じ圧迫条件では、磁石で腹壁を挟んだ方に比べて、金属塊を乗せた方が傷害が軽度だった。金属塊を乗せてマイクロアレイで調べた約31,000個の遺伝子のうち、圧迫開始12時間後には240個の遺伝子で、1日後には877個の遺伝子で、発現量が2倍以上に増加していた。リアルタイムPCRで遺伝子を調べると、12時間後と1日後には炎症に関連した遺伝子の発現が増加したが、3日後から減少し、もとの発現量に近づいた。 以上、褥瘡の動物実験モデルを作製して経時的に傷害を評価し、初期に発現が変動する遺伝子をマイクロアレイで絞り込んだ。また、ペントバルビタール麻酔は有意に傷害を軽減するので、圧迫は覚醒状態で行うことが必要と考えられた。
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