平成19年度に、ラットの腹壁を、約50、100mmHg相当の力で2、3、4時間圧迫する褥瘡モデルを作製した。圧迫開始から12時間、1、3、7日後に腹壁を試料として採取し、凍結切片をヘマトキシリン・エオジン染色して傷害を評価した。その結果、圧力と圧迫時間の増加に伴って傷害が増大した。ペントバルビタール麻酔は傷害を有意に軽減したので、圧迫は覚醒状態で行うことが必要と考えられた。また、100mmHgの圧力で、ラットの腹壁を4時間圧迫して圧迫開始から12時間、1、3日後にラットの腹壁を採取し、遺伝子発現について検討した。発現が顕著に増加した遺伝子には、アポトーシス、炎症反応、酸化ストレス、タンパク質分解、低酸素に関わるものが多かった。平成20年度は、引き続いてこれらの実験を行い、組織の傷害に対する論文をまとめて投稿した。また、ヤイクロアレイで発現が増加した遺伝子の中から、とくに炎症に関連する遺伝子に注目して、リアルタイムPCRを用いて定量的に調べた。さらに、これらmRNAから作られるタンパクをELISAで定量的に調べた。その結果、マイクロアレイとリアルタイムPCRの値は良く一致したが、mRNA量とタンパク量とは、必ずしも増減が一致しないものもあった。したがって、マイクロアレイとリアルタイムPCRのデータを論文にまとめて、投稿する予定である。mRNAとタンパク量が一致しない理由が、技術的なものかどうか検討している。
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