本研究の第1課題として、生後3カ月までの子どもを持つ父親の精神状態を調査し、仕事のストレス及び産前・産後期間にある妻の精神状態との関連を検討した。【方法】F県内の産科クリニックで出産した母親の同意を得て父親に郵送調査した。調査項目は、職業の項目を含む基本的属性、精神状態は、エジンバラ産後うつ病尺度(EPDS:4件法、得点が高い程精神状態が悪く9点以上が高得点)を用いた。母親に対しては、退院時と産後1カ月時の2回対面で調査した。【倫理的配慮】口頭と文書で、研究の主旨と方法及び情報の守秘等について説明し、回答をもって同意とした。【結果】文選対象者は、父親88名(回答率35.7%)、平均年齢32.9歳(範囲21〜47)、対となる母親88名、平均年齢31.0歳(範囲17〜44)であった。うち初産婦は40名(45.5%)、父親の回答時期は平均生後40.6(範囲6〜97)日であった。父親のEPDS平均点は4.57±2.70、9点以上の高得点者は8名、母親の退院時のEPDSは4.06±3.50、高得点者11名、産後1カ月時は3.84±3.10、高得点者10名であった。ストレスが有る父親は55名(63.5%)で、うち仕事のストレスは71名(80.7%)であった。母親の精神状態の高低得点別の父親の精神状態は、2時点共に有意な差はなかったが、高得点群の母親の夫の方が精神状態が悪い傾向であった。父親の精神状態と関連したのは、産後1カ月時の母親の精神状態(r=0.216、p<0.05)、ストレスの有無(p<0.01、t検定)であった。【考察】子どもが誕生後3カ月以内の父親の精神状態は、妻の精神状態と相互に影響している。父親の精神状態は、子を持つ体験とは無関係で、社会的役割の仕事に加えて家庭環境の変化が影響を及ぼしていることが推測され、影響要因について分析方法を変えて検討することが課題となった。
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