研究概要 |
本研究の第2課題として,F県内2つの産科クリニックで出産した女性の夫を対象として,妻を介して調査用紙を渡すか郵送した。妻の妊娠中に起こった精神的揺らぎの有無・程度・時期を問い,揺らぎがあったと回答した男性に,対面か電話で半構成的面接を行った。修正版グラウンデッドセオリーアプローチ法を用い分析した。【結果及び考察】回答者473名中,本調査の該当者110名(出現率23.3%)。面接は22名,平均時間16(範囲6〜48)分,平均年齢33.4(範囲25〜46)歳,第1子14名(63.6%),精神的揺らぎの程度は〔非常に揺らいだ〕が1名。時期は,妊娠判明〜4カ月迄3名(12.0%),妊娠5〜8カ月迄16名(64.0%),以後出産迄6名(24.0%)。分析テーマ『妻が妊娠中に男性が精神状態が不安定になつた原因』の抽出概念は13で,[妊娠中の妻の不安定さ]により[妻から当たられた]り[振り回された]りすることで,男性は精神的に揺らいでいた。妊娠中の妻の状態を実感できず[妻への過刺な気遣い]や[妊娠・出産に対する懸念]を示す一方,責任感から役割を果たす努力をするが,[役割遂行の空回り]状態となる。家事ができない又苛々している妻を前に,頭ではわかっていても[くつろげない家庭]に閉口し,[妊娠に伴うライフスタイルの変化]に気持ちがついていかない。 妻に気遣い家事を引き受けるものの,男性にとっては[やりがいのない家事負担]となっていた。家庭内に引越等の出来事や仕事の変化が起こり,男性に[課題が過重]にかかっていたことも一因となっていた。男性が精神的に揺らいだ多くの原因は妻との関係を示す概念で,妊娠前からの[膠着した夫婦関係]や[妻とのスタンスの相違]が,妊娠を期に彷彿したことが伺われた。根底に男性の[根強いジェンダービリーフ]の存在が推測され,妊娠期の妻を支援する男性の心理状態の特徴が見えてきた。
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