研究概要 |
本研究の最終課題として,子どもが誕生後1年間5時点の父親の精神状態を調査し,育児や家事及び仕事のストレスとの関連を検討した。【方法】F県内の産科クリニックで出産した母親の同意を得て父親に郵送調査した。調査項目は,職業の項目を含む基本的属性,精神状態は,エジンバラ産後うつ病尺度(EPDS:4件法,得点が高い程精神状態が悪く9点以上が高得点)を用いた。【倫理的配慮】研究の主旨と方法及び情報の守秘等について文書で説明し同意を得た。【結果】分析対象者は297名(回答率45.8%),平均年齢33.17±5.47(21~52歳),第1子48.82%,殆ど正常な出産経過であった。核家族が多数を占め,97.6%が有職者で殆ど会社員であった。87.9%が労働時間延長を有し,79.2%が仕事のストレスが有った。5時点の回答数は,(1)新生児期223名(2)生後1ヵ月時238名(3)生後3ヵ月時197名(4)生後6ヵ月時176名(5)生後1年時167名であった。EPDS平均点及び高得点者割合は,5時点順に(1)4.6±2.9,9.9%(2)4.5±2.9,8.4%(3)4.2±2.9,9.9%(4)4,8±3.8,14.7%(5)4.3±2.7,8.4%であった。時期の有意差はなかった。有ストレス者の割合は,5時点順に(1)69.8%(2)68,0%(3)68.0%(4)67.7%(5)72.5%で,うち仕事ストレスはどの時点でも90%(86.8~90.5%)前後あった。一方,家事がストレスと答えた者は6.1~11.0%の範囲で,育児ストレスは僅か(1.3~6.3%)であった。妊娠期に精神状態が悪かった者は66名(22.5%)で,5時点全てのEPDS得点と負の相関が見られた(p<0.05~0.01)。【考察】子どもが誕生後1年間の父親のEPDS得点は,同時期の母親より高い傾向を示し変化が少ないことが示された。また,父親の精神状態には,子どもの誕生前からの仕事ストレスが最も関与していることが示唆された。【結論】子どもが誕生後1年間の父親の精神状態は子を持つ体験とは無関係で,社会的役割の比重の影響が大きいことが推測された。父母の精神状態の関連性については,妻と対のデータセットで分析することが今後の課題となった。
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