本研究の目的は、在宅ターミナルケアでの困難場面や危機的状況において、訪問看護師はどのように対処しているのかを明らかにすることである。方法は、A市およびA市近郊に勤務する在宅ターミナルケアに5年以上従事する訪問看護師5人を対象に面接を行い、そのデータを質的に分析した。結果、困難例として、経済的事情から十分な緩和治療と必要なサービスが利用できないケース、患者は在宅療養を希望しているが子どもは入院治療を望むケースなどが語られた。 訪問看護師は、様々な困難な状況においても、その中での「より良いケアを提供する」ことに最善を尽くし、「その人らしさを大切にする」「家族の力を引き出す」ことに専心し、「チームで関わる」ことでケアを深めていた。同時に、それぞれの場面を通して「訪問看護師として成長していく」自分でありたいと考えていた。「より良いケアを提供する」カテゴリーは<知識と技術><対象の理解><的確な判断><予測する><症状緩和に努める>の5つのサブカテゴリー、「関わりを深める」はく安心させる><対象の笑顔を引き出す><対象の方の力が抜けるように関わる><タイミングを読む><こちらから近づく><納得がいくまで説明する><対象の気持ちを想像する><ちょっとした変化に気づく>の8つのサブカテゴリー、「その人らしさを大切にする」は<希望を支える><尊厳ある関わり><寄り添う>の3つのサブカテゴリー、「家族の力を引き出す」は<家族との連携><家族の代弁><家族の力><家族としての役割を果たす>の4つのサブカテゴリー、「チームで関わる」はく医師との連携><チーム内で情報を交換する><同僚を育てる><組織を動かす>4つのサブカテゴリーから構成されていた。 また、ターミナルケアにおいて「ユーモア」が患者・家族と医療者の関係を深め、緊張を緩和させ、患者・家族の本音を引き出すことができると考えていた。
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