本年度は最終年であるため、研究のまとめを行った。すなわち「身体感覚活性化マザークラス」卒業後1年から5年目の女性40名のインタビュー結果を分析し、マザークラスが女性に与えた影響を抽出した。研究参加者は全員母子ともに健康で、38名が産後4か月まで完全母乳保育を行い、母乳保育期間は1~2年であった。出産形態は自然分娩が38名で2名が帝王切開分娩であった。最も印象に残っているメニューは「食」であり、参加後、食事内容が変化したと全員が述べ、さらに現在も食が自分や家族の生活に影響を与えていると答えた。またアロママッサージや気功によってより自分の身体を感じ、身体が心地よいように動き、そのことで自らの「産む力」を感じ取っていた。さらに胎児との対話や子守唄は、出産やその後の育児に影響していた。参加者はドゥーラや妊婦との心地よい関係を「居心地のよい場」「異空間」と表現した。クラス終了後も参加者は定期的に集まり、絆を紡いでいた。マザークラスが人生に与えた影響には5つのカテゴリー【身体の声を聴く】【感謝する】【受け入れる】【あるがままに生きる】【社会に伝える】が抽出された。参加者はクラスを通じて身体感覚が敏感になり、それに合わせて身体を調整することを日常の中に取り入れていた。また身体の巧妙さに感動し、すべてのことに感謝する気持ちが持てるようになった。身体の声を聴くようになると、自分の身体に起こる現象には必ず意味があることを認め、あるがままに生きるという人生哲学を獲得していた。また身体で得た快の経験をひとりでも多くの人に伝えたい欲求があり、地域でさまざまな活動を行っていた。よって妊娠期に培った身体感覚とその認識は、時を経ても定着していることが明らかになった。以上より、自分の身体で感じることを促す「身体感覚活性化」教育は、妊婦の行動変容に有効であることが示唆された。
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