平成21年度は3年間の研究の3年目、最終段階として以下の3点を実施した。【その1】子どもの周囲の大人がどのように医療に関する情報を伝えているか、これまで保育士や幼児期の子どもを養育している母親およそ50名に対して実施した調査結果を概観した。インタビュー内容を質的に分析した結果、母親も保育士も子どもが病気・受診・予防接種の際、《目的地(病院)に連れて行くための声かけ》、《子どもを頑張らせるための声かけ》、《子どもの理解力に応じた説明》をしていたが、《子どもへは説明しないという判断》や受診前の子どもに『嘘をつく』という対応も行われていた。また、受診の際《親が手に負えないと感じる子どもの状態》は捉えやすい子どもの体温数値を受診基準にする母親が多かったが、その値には個人差が大きかった。さらに、母親の考える健康観と実践に一貫した関係性は見いだせなかった。これらの結果を踏まえ、子どもの心理的準備・主体的な医療参加のためには、母親への啓蒙活動も必要と判断した。 そこで、【その2】研究結果を地域の母親に還元するためのシンポジウムの開催を企画した。子育て中の母親を対象に、病院の受診・予防接種を受ける際に子どもの理解力に応じた説明や、その方法を検討するという趣旨のシンポジウムである。小児看護、幼児教育、母性看護などの立場から提言を行った。北関東の小児専門病院や総合病院・小児病棟で実際に行われているプリパレーション内容の展示なども行い、参加者の高い関心を得た。【その3】子どもの主体的な医療参加のためのプログラム作成のため、現在はそのためのツールとしての絵本分析を進行中。その成果は、平成22年度開催の学会発表や、子どもへの健康教育の実施を予定(具体化)している。 本研究は3年間で完結を見るには至っておらず、今後も継続して取り組んでいく予定である。
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