基礎的な研究の結果に基づき体系的に構築していくために、段階的に研究を計画し実施した。その第1段階として欧文献と和文献の総合的な対象文献から「がん患者のセルフケアの概念分析」の研究を行った。研究結果より、セルフケアの先行要件には個人因子として【がんによる強度な複数のストレスの曝露】、【がん治療に関する情報・支援の必要性の認識】、【疾病や治療による不安の増大】、環境因子として【医療の享受による一時の安寧の実感】があった。そして、属性は【がんに関する除法の探索と活用】、【がんの進行を抑えるための保健行動の実行】から形成された。帰結は【苦悩の経験から得た心身の安定】、【がんと共存する新たな自己の創造】からなった。以上の結果より、がん患者のセルフケアの定義は『がんに関する情報の探索と活用により、生活を保持するための意思決定を行うことである。そしてがん治療に伴う副作用や状態の変化へ対応し、がんの進行を抑えるための保健行動の実行から形成される』と定義づけられた。 がん患者のセルフケアの重要性はこれまでの多くの国内外の先行研究によって述べられてきたいが、明確に定義づけられたものはなかった。そのため、今回の研究によりがん患者のセルフケアの定義づけができたことは、大きな意味があり、今後のがん看護の研究の発展に寄与できると考える。 第2段階の研究として、がん患者の研究結果を基盤に、がん患者のセルフケア能力尺度を開発し援助モデルにつなげていくことが必要と考えている。 今後さらにがん患者の増加が予測されているが、患者がもつさまざまなセルフケア能力を活用し、患者の生活の質の向上を支援していくことが看護の役割であり、本研究を継続していく意義は大きいととらえる。
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