本研究目的は、不妊治療中夫婦の関係性の調整に必要な看護介入指針を作成することである。不妊女性の心理や不妊女性の心理面への影響要因として不妊治療中夫婦の関係性が大きいことはすでに論じられている。しかしながら、その夫婦の構成要因である不妊治療中男性の心理に関する情報は少なぐ、本研究に先立ち、不妊治療を受けている男性の心理に関する文献検討を実施した。不妊治療中男性の心理に関連した118文献(国内49文献・海外69文献)の検討の結果、1.従来、不妊に関連した心理ストレスは女性に多く見受けられるとされていが、男性も不安定な心理状態である。特に、男性不妊であった場合の男性性への影響は多大である。2.不妊という現象や治療の継続に関して、性差による認識、心理面への影響に相違がみられる。3.治療を継続上生じる日常生活での困難は明確に示されていない。4.ストレス対処資源をどの程度持っているか、明らかになっていない。上記の視点より、「2.性差による認識や反応の相違」が夫婦の関係性に何らかの影響を与えると推測された。そこで、不妊夫婦を対象に認識の相違や反応の相違の要因検討を目的にアンケート調査を実施した。その結果、不妊男性は不妊に関連する知識(治療・検査・助成システムなど)など基本的な情報が少なく、情報収集のためのサポート源を求めていること、反面女性は治療が成功しないことや夫婦の違和感など、心理面に関する悩みやそれを打ち明ける場所を探していることなどが示されていた。この結果から、治療過程における支援方法には、性差により関わり方の工夫が必要であることが示唆されたと考えられる。また、今後の研究計画として、「3.不妊男性の日常生活での困難さ」を明確にし、男性への支援方法の検討を深め、男性の心理的安定を図るためのより具体的な支援方法を明らかにする。さらに、その結果を受け、夫婦の関係性調整への介入指針を導く予定である。
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