不妊患者に対する心理支援の充実化は、治療の円滑化に加え、患者の心理的安定を図るために必要不可欠な要素である。厚生労働省が政策的な支援を展開している一方、不妊患者に対する個別的な支援の多くは医療施設が担うことが多く、また施設の自助努力に任されており全貌が明らかにされていない。今回、不妊治療施設で実施されている心理面への患者支援の現状を把握することを目的とし調査を実施した。日本産婦人科学会における体外受精・胚移植等生殖医学の臨床実施登録施設594施設を対象にアンケートを郵送した(平成20年4月〜5月)。回収率19.3%(115施設)であり、医療法人60(51.8%)、独立行政法人19施設(16.7%)、公立8施設(7.0%)、その他28施設(24.6%)であった。1.不妊に関連した専門職者(不妊カウンセラー・体外受精コーディネーター・臨床心理士)の設置割合は、50%程度であった。2.支援状況として、個別面接、体外受精説明会は80%程度の施設で実施されているが、勉強会、電話相談は50%以下であった。3.個別面接担当者は、大部分が看護師によって実施されている。面接所要時間は、10〜60分とばらつきが見られていたが、30分もしくは60分で実施される施設が最も多い。4.男性へのサポート実施施設は約50%、個別面接実施施設は35%程度であった。心理専門職者は全体の約50%の定置であり十分な心理支援体制が整っているとは言い難い現状であり、看護師が通常業務の傍らで支援を実施していることが面接時間、料金形態などの面より推測された。さらに、男性への支援割合も非常に低いことが明確になった。心理的支援の具体的内容や提供方法の明確化、生殖療施設における均質な患者支援体制の定着に向けた取り組みが求められると考える。
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