本研究の目的は、統合保育に参加する病気や障がいのある子どもと仲間・保育士の社会的相互作用場面で観察される社会的行動の性質と意味について発達的変化を検討することにある。 平成19年度は、平成20年度に保育場面の縦断的行動観察を実施させていただく協力園にて、10月以降予備的保育観察を行った。 その結果、協力園全入園児の約10%が発達障害(経過観察中を含め)の子どもであった。子どもたちは、3歳から6歳で、集団生活で「主体的な参加」「健康生活の生成」「健康問題への健全な対処」に課題のあることが観察された。 例えば、発達障害の子ども・仲間間の「主体的な参加」については、園庭での自由遊び以上に保育室内のコーナー遊びやお集まりで課題の多いことが明らかとなった。特に、コーナー遊びは子どもの自発性に基づく主体的な遊びの要求を取り入れた活動であり、保育環境に挑戦する「選択の自由」、遊びの「方法の自由」、そして遊びの結果について、個性的で創造的であることを認める「評価の自由」が保証された活動である。しかし、発達障害の子どもにとっては多数の教材・教具の置かれた保育環境は脅威的な環境に映り、安心できない環境下では自己を委縮させてしまった。その結果、自分の活動が焦点化できず、衝動的・破壊的・攻撃的な社会的行動をとることがあった。また、その衝動性などが、仲間の否定的な感情や攻撃性を引き出し、「こわい」「近くに来ないで」「一緒に遊ばない」「見てるだけならいいよ」といった、活動への参加の拒否、限界や制限を作りだしていた。 発達障害の子どもは、集団生活で仲間と過ごす「楽しさ」を感じても断片的で連続性に乏しい。今年度は、発達障害の子どもが仲間との快情動を持続できない根拠は何なのか、そこへの支援を考え、関係支援に繋がるよう社会的行動の変化をとらえ、かつ保育士との連携の可能性と課題をも検討していきたい。
|