研究概要 |
本研究は,若年性神経難病患者の"社会との接点"と"SEIQoL-DW"との関連に焦点を当て,患者の生活の質(Quality of Life,QOL)の向上に寄与する方策を検討することを目的とする研究である。 多くのケースについてSEIQoL-DWを用いて経時的に分析していくことと,ナラティブを同時に聴取していくことにより,上記のことを明らかにしていく過程の中で,若年性神経難病患者のQOLについて一定の傾向が明らかになると思われる。そしてそれを通して,QOLを向上させるための具体的な方策を検討することができると考える。 本年度は,若年性パーキンソン病患者24名を対象に,(1)ライフヒストリー法による個人の生活史の把握,(2)SEIQoL-DWの調査を行った。その結果,以下のことが明らかになった。 1.SEIQoLのキューの数として多かったのは家族、健康、余暇活動(趣味)、患者交流であり,これらは多くの患者が日常生活において大切にしているものである。 2.SEIQoL、index値を総括すると,高かったのは仕事、患者交流であり,これらの充実感が患者のQOLへ強く影響すると考えられる。反対に低かったものは友人関係、経済面、健康面で,これらは患者の生活背景と密接に関連している現れである。 3.SEIQoL-DWの値は患者の主観をよく反映し,その個体差をデータとして把握しやすい。ただし,値はADLには相関せず,また,値を他者と比べることはあまり意味がない。むしろ個人のキューの状況を継続的に見ていくことで,その値が意味することが明確となり活用性も高い。 4.SEIQoL-DWを継続的に用いながら,そのキューの内容や値に注意しつつ,人生の物語の再構築ともいえる「ナラティブの書き換え」をしていくことが非常に重要である。それが,難病をもつ患者の内的な体験にポジティブな意味をもたせるための看護ケアの方向性であると思われる。
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