研究概要 |
本研究は、若年性神経難病患者の“社会との接点"と“SEIQoL-DW"との関連に焦点を当て、患者の生活の質(Quality of Life,QOL)の向上に寄与する方策を検討することを目的とする研究である。 多くのケースについてSEIQoL-DWを用いて経時的に分析していくことと、ナラティブを同時に聴取していくことにより、上記のことを明らかにしていく過程の中で、若年性神経難病患者のQOLについて一定の傾向が明らかになると思われる。そしてそれを通して、QOLを向上させるための具体的な方策を検討することができると考える。 本年度は、若年性パーキンソン病患者43名を対象に、(1)ライフヒストリー法による個人の生活史の把握、うち30名に対して(2)SEIQoL-DWの調査を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 1. SEIQoLのキューの数やSEIQoL-index値の特徴は、これまでと同様の傾向を示した。 2. SEIQoL-DWは原則として1年に一回づつ実施し、今年度は過去からの調査の蓄積により、30名のうち、2回目の実施が12名、3回目の実施が9名となった。 3. 毎年SEIQoL-DWを実施することにより、個人のキューの状況を継続的に見ていくことで、その値が意味することが明確となり、その時のQOLの状況が把握しやすい。特に値の上昇、または下降の幅が大きい対象者については、その原因が明確に理解できた。 4. SEIQoL-DWを継続的に用いながら、そのキューの内容や値に注意しつつ、人生の物語の再構築ともいえる「ナラティブの書き換え」をしていくことが非常に重要である。それが、難病をもつ患者の内的な体験にポジティブな意味をもたせるための看護ケアの方向性であると思われる。 5. 今後もさらに対象者を増やし、また個々人については経時的にフォローしていくことで、さらに“社会との接点"と“SEIQoL-DW"との関連が明確になると思われる。
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