研究概要 |
新卒看護師の離職意向について、専門職としての準備性を含め、職業性ストレスと心身の健康度の関連性について、地域差を考慮し検証することで、病院組織における新卒看護師の早期離職についての示唆を得ることを目的に、質問紙による縦断研究を実施した。全国の特定機能病院9施設の平成19年度入職の新卒看護師全員を対象に、自記式質問紙調査を、先行研究で新卒看護師の離職意向が高まると指摘される初夏(6〜8月)と、秋(11月〜12月)に、対象施設経由で留め置き式にて実施した。基本属性,就業特性,組織特性,専門職としての準備性を測るオリジナルのレディネス22項目のスケール,Karasekl職業性ストレス尺度(JCQ日本語版)の22項目,厚生労働省の疲労蓄積度の自覚症状評価の13項目,GoldbergのGeneral Health Questionnaire(GHQ)12項目版,6項目から構成される離職意向の尺度を用いた。手続き上の問題があった1施設を除く、8施設計、第1回目(Time1)は8施設計414名(回収率73%、有効回答率91%)、第2回目(Time2)は439名(回収率78%、有効回答率98%)から回答があった。欠損値のないTime1及びTime2の両方の回答者301名(回収率53%)を最終的な分析対象とした。分析方法として予備分析の後、従属変数と独立変数との関連性を重回帰分析にて検討した。結果、新卒看護師の離職意向について、仕事の量的負担に起因する疲労蓄積と社会的支援、とくに同僚のサポートの問題が離職意向の重要な予測因子であった。また、レディネス因子の「看護師としての志向性」も重要な予測因子であった。地域問に関しては関連性は認められなかった。新卒看護師の離職意向において、過重労働対策を含む疲労対策と組織の支援体制の重要性が明らかとなった。国内の新人看護師の離職対策について示唆が得られた。
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