研究概要 |
【目的】新卒看護師の早期離職について、地域差に加えた組織特性、個人特性、職業性ストレス及び心身の健康度を含めた要因について、縦断調査により検証した。【対象と方法】全国の特定機能病院のうち調査協力が得られた14病院(北海道・東北地方2か所、関東・甲信越地方7か所、東海北陸地方2カ所、近畿地方3か所)の平成20年度に就職した新卒看護師(n=1,364)に対し、第1回目(6〜8月)と第2回目(11月〜翌年1月)に施設経由での自記式質問紙調査を留め置き式にて実施した。質問項目には、基本属性,就業特性,組織特性および病院設置地域の都市規模,職業準備性(レディネス)尺度,日本語版努力-報酬不均衡モデル職業性ストレス調査票の23項目,オリジナルの役割モデル尺度、厚生労働省の疲労蓄積度の自覚症状評価(CF-13)の13項目,GoldbergのGeneral Health Questionnaire (GHQ) 12項目版,離職意向の尺度を用いた。第1回目は788名、第2回目は719名の新卒看護師から回答があった(平均回収率:58.0%, 52.7%)。うち欠損値のないデータ(第1回目は737名、第2回目は663名)最終分析の対象とした。離職意向得点を従属変数とし、各変数との相関係数を求め、さらに従属変数との関連性を重回帰分析にて検討した。統計パッケージはSPSS15. 0Jを用いた。【結果及び考察】第1回目は、「看護師としての志向性」が低い、精神的健康度が悪い、蓄積疲労度が強い、就業前研修を実施している組織の者、職業性ストレスの「報酬」が低い、レディネス尺度の「看護基本技術と能力」及び「臨床実践能力と自信」が高い、職業性ストレスの「努力」が高い、が説明力の順で離職意向と有意な関連性があった。第2回目は、蓄積疲労度が強い、「看護師としての志向性」が低い、職業性ストレスの「報酬」が低い、役割モデルが少ない、レディネス尺度の「看護基本技術と能力」が高い、精神的健康度が悪い、が説明力の順で離職意向と有意な関連性があった(調整済みR二乗値は、0.542、0.448)。新卒看護師の離職意向において、看護師としての志向性の問題に加え、蓄積疲労や精神的健康度、職業性ストレスの「報酬」に加え、役割モデルの存在の重要性が明らかとなった。新卒看護師の早期離職と関連性の強い離職意向の要因が明らかとなり、国内の新人看護師の離職対策に関する示唆が得られた。
|