【研究の目的】質的調査法を用い、新卒看護師の離職意向の要因を明らかにし、今後の対策の示唆を得る。 【方法】(1)個人インタビュー調査:看護師1年目の離職者もしくは離職意向を持った者で、事前に調査協力の了解が得られた7名を調査対象とした。調査期間は平成21年5月から7月である。離職もしくは離職意向が高まった状況について1~1.5時問程度の反構造化分析を行った。インタビューでは、A.職業と就職先の選択動機、B.仕事上の困難さやつらさ、C.離職意向との高まりや離職を考えた状況、D.継続して働く上での個人と組織の課題、等を語ってもらった。(2)フォーカスグループディスカッション:新卒看護師の早期離職を経験した看護管理者7名を対象に平成21年11月に2グループに分け、A.早期離職した理由と背景、及び個人と組織の特性、B.退職を踏みとどまった新卒看護師の状況とその後の適応、C.組織と個人の問題と今後の課題、D.効果のあった早期離職対策、等について1.5~2時間程度のフォーカスグループディスカッションを実施した。(1)及び(2)ともに、録音の許可を得、速やかに逐語録を作成した。質的研究の経験のある研究者とともに内容分析法の手法に従い分析を行った。時系列的な秩序にとらわれず、意味内容の類似性によりグループ編成を行い、抽象度'をあげ最終的に10項目以下のグループに編成し、新卒看護師が離職した要因と対策を明らかにした。【結果】(1)個人インタビュー調査の結果から抽出された離職及び離職意向を高める要因に関してはグループ化を3段階進めた結果、最終的に6グループとなった。6グループの表札名は「現場に対する幻滅感」「職業の適性と仕事の適応の悪さ」「人間関係の困難さ」「心身を疲労させる職場風土」「労務管理体制のまずさ」「仕事の要求水準の高さ」となった。(2)フォーカスグループディスカッションの質的データは、AからCのそれぞれについて、2段階もしくは1段階でグループ化を進めた。最終的なグループの表札名は、A.退職した新人の個人の特徴については、「ストレスに脆弱な気質(性格)」「未熟な人格」「適性とキャリアのミスマッチ」「急性ストレスイベントの体験」であった。B.組織の取り組みについては、「健全な組織運営のための人事管理」「適正な労働と休養に対する職場の理解」「個を考慮した多様な雇用形態」「組織的かつ具体的な支援・指導体制」であった。C.組織の問題・課題は、「組織全体の人事管理及び人材開発の見直しの必要性」「新人の指導・教育に対する支援体制の不足」「看護師の離転職を助長させる労働市場」「無休残業が常習化する職場」「新人の育成機関に伴う時間外労働」「新人指導の負担が誘因となるスタッフの離職」であった。
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