研究概要 |
本研究は,精神障害をもつ人の力量を高め,精神障害者を取り巻く環境に働きかけることができるようなエコロジカルな視点を取り入れた当事者力量精神看護モデルを開発することを目指している。 本年度は,精神障害をもつ当人を対象としたインタビュー調査(研究1)と,精神障害者のケアに携わる看護職者を対象としたケア場面の参加観察およびインタビュー調査(研究2)を行なった。 研究1:精神障害をもつ当人に対するインタビューデータを帰納的に分析し,療養生活および社会生活における当事者の力量を高める要因を探った。当事者の能力を引き出す要因として,<自分への信頼の回復><自分自身がもつ偏見からの開放><病気と向き合うこと><当事者同士の経験、対処の共有><希望の実現,人の役に立つ経験><仕事、誇りの回復><周囲からの信頼、支持><地域の支援ネットワーク>など,当事者、支援者、地域のレベルで要因が抽出された。 研究2:病院および地域の精神保健医療機関において精神障害者のケアに従事する看護職者を対象とした観察、インタビューデータを帰納的に分析し,当事者の力量を高める看護援助について検討した。当事者力量を発見しそれを育む看護として,<非侵襲的なミクロ、マクロの観察><本人のプロセスに応じた流動的な看護判断、戦略><本人の強み、生命力の発見に基づくアプローチ><本人の意思、経験の尊重><本人との協働><本人の周辺の人々の安定化><支援チームの中で役割の分担、拡張>などが抽出された。 本年度総括および次年度の課題:精神障害をもつ当事者の力量の発見、開発に関わる要因および看護援助について検討した。次年度は,当事者の力量に影響を与える社会文化的な要因を探り,今年度の成果と併せ,当事者の力量を高める精神看護の実践、研究モデルを検討する。
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