本研究は、精神障害をもつ人の力量を高め、精神障害者を取り巻く環境に働きかけることができるようなエコロジカルな視点を取り入れた当事者力量精神看護モデルを開発することを目指している。平成20年度は、当事者力量形成に影響を与える社会文化的要因に関する研究を行い、平成19年度の精神障害者の力量を高める援助技術に関する研究成果と併せて、当事者力量精神看護モデルを構成する概念を検討した。平成21年度は、当事者力量評価質問紙及び当事者力量を高める看護援助に関する質問紙を作成し、質問紙の信頼性を検討するとともに、当事者力量を高める看護援助の実施状況と当事者力量との関連を調査した。 調査に先立ち質問紙を作成した。まず、平成19年度の研究成果及び文献をもとに、当事者力量評価及び当事者力量を高める看護援助に関する質問紙の項目を吟味した。次に、質問項目の内容妥当性について専門家及び当事者から意見を聴取し、質問紙を修正した。 調査対象者は県中央部と南部の精神科病院2ヶ所及び総合病院精神科病棟1ヶ所に勤務する看護師270名である。調査方法には郵送留置法を用いた。計193名(回収率71.5%)から回答を得て、有効回答187名分を分析した。Cronbachのα係数は、当事者力量評価質問紙0.84、看護援助質問紙0.89であり、両質問紙ともに内的整合性があることが確認された。因子分析(重み付けのない最小二乗法、プロマックス回転)の結果、当事者力量評価質問紙4因子(病気管理、充実生活、求援、生活目標)、看護援助質問紙4因子(対処力強化、肯定、尊敬、受容)が抽出された。 次年度は当事者力量を高める看護援助の有効性を検討する予定である。
|