研究概要 |
本研究では,高齢者虐待に占める報告数が多く,外部からの判断が難しいネグレクトに焦点を当て,多職種が使用可能な介入に役立つネグレクトの判断基準を作成することを目的としている。とりわけ,虐待かどうかの判断に悩む専門職に対して,虐待の程度などを判断する客観的な基準を作成することを目的に,今年度は以下を実施した。 (1)高齢者虐待チェックリストの活用状況と課題の分析:在宅で高齢者虐待事例を担当する保健医療福祉専門職991名に,郵送によるチェックリストの使用状況調査,ネグレクトの項目抽出調査を実施した。対象施設は石川県,岐阜県内でWAMNETに掲載された包括支援センター,居宅介護支援事業所,訪問看護事業財団に登録している訪問看護ステーション全施設とした。項目抽出調査用紙は,厚生労働省や都道府県発行の虐待防止マニュアル及び文献検索により高齢者虐待チェック80項目を設定し,ネグレクトの判断に必要な項目と具体的な判断基準があるとよい項目を聞いた。回収率は26.7%,有効回答率83.8%であった。石川県34.7%、岐阜県65.3%の割合で,所属は居宅介護支援事業所が66.5%,職種は保健師、看護師が25%であった。ネグレクトと判断したことがあるのは58.8%,そのうち判断に困ったのは69.6%,チェックリストを使用した人は5.3%とほとんどいなかった。役立った人は確信が持てた、多角的に検討できた,情報共有のツールになったと回答した。80項目の虐待チェック項目からは27項目のネグレクト項目が抽出された。SPSSによる分析を進め,判断基準が必要な項目の精選中である。 (2)判断基準作成に関する文献レビュー:チェックリストに関してPubmed,Scopus,医中誌を検索し,調査用紙の作成に使用した。今後は概念分析を並行し,基準の作成にとりいれる予定である。
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