本研究では、精神障害者の自尊感情回復モデルを構築し、自尊感情の回復をめざした臨床プログラムを開発することを目的とする。昨年に続き、彼らの自尊感情が低下した時に、浮かぶ考えや取る行動、気分の経験世界がどのように繋がっているかを明確にした。方法は34名の地域で住む当事者を対象に、修正版Grounded theory approachを用いて分析した。結果、自尊感情が低下する状況が生じた時、《否定的な自己像》が活性化し、それにより、否定的な《バランスを失った思考》が次々に引き出され、それらの思考が頭の中をグルグル回り、《追い詰められた不快な気分》《不快な身体現象》、自己内外に対し《攻撃または守りとしての行動》が生じ、彼らはその悪循環に巻き込まれていた。悪循環は自己に対する強いこだわりの思いから生じると解釈できた。この悪循環から脱出する看護支援として、《否定的な自己像》を認識する、スキーマの修正、リラクゼーション活動、肯定的自己評価を意識化できる、などの必要性が示唆された。 以上の結果をもとに、14回で構成する「自尊心回復をめざすグループ認知行動看護療法」を構築した。具体的な内容は、(1) 心理教育(自尊心の重要性、認知行動療法の基本モデル、低い自尊心の時のスキーマ、肯定的思考の取り込み方、ノーマライジング)、(2) 認知の再構成(観察、整理、バランス回復)、(3) スキーマの再構成(観察、整理、バランス回復)、(4) 行動療法(計画立案、リハーサル、ロールプレイ)で構成する。 また、毎回、可能性への挑戦、承認を得る、フィードバックと要約、ホームワークの提示と確認、呼吸法や笑いやレクリェーションなどのリラクゼーショシを行う等の内容を含むものとする。
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