研究協力施設である長崎労災病院のアスベスト外来受診者を対象とし、本研究の目的と計画、意義について文書と口頭で説明を行い、同意・署名を得た上で診療前に不安状態とうつ状態の測定を行った。この研究は佐賀大学倫理委員会、及び長崎労災病院倫理委員会へ申請し許可を得た。 調査項目は、特性不安、状態不安、うつ状態、レントゲン所見、その他属性として、年齢、性別、職業、喫煙歴、アスベストばく露歴であり、免疫学的指標として4月以降から血清中のオステオポンチンの測定を予定している。現在80名分の血清を凍結保存している。これまでのデータでは、受診者の半数以上が受診前に強い不安を感じており、約20%がうつ状態を呈していたことが明らかになった。また、受診前の精神健康状態とレントゲン所見との関係をみると、異常なしに比較し関連疾患のある受診者の精神健康状態は悪い傾向にあった。この結果は受診者が診断を知る前の精神健康状態との関係であり、偶然とも言えるものであった。また、喫煙はアスベスト関連疾患の発症には直接影響していなかったが、この集団の喫煙率は約50%で以前吸っていた人を合わせると約80%であり、アスベストばく露に喫煙が加わると相乗的に肺がん発症の危険率が高まるという報告かちも、外来で禁煙の啓蒙を進めていく必要があると思われた。来年度はこの得られた結果にさらに科学的データ(血液データ)を加え、アスベストばく露を受けた人の精神健康状態改善における看護師の役割の重要性とアスベスト関連疾患の早期発見についての検討を深ある必要がある。そして、結果を国際的にも公表することが重要である。
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