アスベスト外来を初めて受診した人を対象に不安及びうつ状態とレントゲン所見及びアスベスト関連疾患である悪性中皮腫や胸膜プラークで高値を示すといわれるオステオポンチンなどの病態、その他属性との関係をみた。協力を得られたのは138名で、男性134名、女性4名、平均年齢54.0±12.5(18-83)、初回アスベストばく露から今回の受診までの期間33.4±14.6(0-60)であった。対象の半数以上が診察前に強い不安を感じており、とくに胸膜プラークなどの関連疾患があった人はなかった人に比較し診察前の不安や不安性格傾向、うっ状態が有意に強かった。頻度の高い自覚症状としては「胸痛」、「咳漱」、「息切れ」で、これらの症状があるほど、診察前の不安は強かった。「初回アスベストばく露から今回の受診までの期間」は診察前の不安との相関はみられず、アスベストを取り扱う仕事に就いて短期間でも不安の強い人がいることがわかった。年齢はうつ状態と有意な弱い相関を示したが、診察前の不安及び不安性格傾向は相関はみられなかった。また、血清オステオポンチンと精神健康状態との関係はみられなかった。アスベストばく露を受けた人々を対象としてその精神健康状態と病態との関係をみた調査はこれが世界でも初めてであり、これから増加すると予想されるアスベスト関連疾患患者への援助を考える上で考慮すべき結果が得られている。アスベスト外来では受診者の不安が強いことを考慮して、言動に気をつけ、また不安やうつ状態の原因を軽減できるように不安の原因をよく聞くなど精神的な援助が必要である。
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