研究概要 |
沖縄における地域高齢者の伝統的地域支援ネットワークに関する研究の一環として,とくに80歳以上高齢者のスピリチュアリティに焦点をあて,主観的幸福感や地域活動及び地域の伝統行事への関与などとの関連から検討を行った。対象は沖縄県南部に位置するN町25地区のうち,伝統的地域特性を有するA地区と地区外からの居住者の多いB地区を対象地域とし,調査協力の得られた48名(男18名,女30名)について,平成21年9月から平成22年2月の間に訪問面接調査を実施した。調査は半構成的面接により行い,基本属性のほか,高齢者用スピリチュアリティ健康尺度,WHO(世界保健機関)が開発したSubjective Well-Being Inventory(以下SUBI)および地域の祭事や行事とのかかわり状況などについて聞き取りを行った。分析は,スピリチュアリティ尺度得点を中央値でSP低群,SP高群に群分けし,比較検討した。その結果,平均年齢はSP低群に比べSP高群で有意に高く,家族構成ではSP低群は同居の者が,SP高群は独居者の占める割合が高かった。SUBIとの関連では,「心の健康度総得点」およびSUBI下位領域の「人生に対する前向きの気持ち」「達成感」「至福感」「社会的な支え」で有意差を認め,いずれもSP高群で有意に高かった。伝統的行事に参加しない者の割合は,SP低群に比べSP高群で有意に高かった。本調査結果から,加齢に伴いスピリチュアリティも高まること,また独居者や伝統的行事に参加しない者でスピリチュアリティも高かったことから,スピリチュアリティは孤独や寂寥感など老いのプロセスに伴う心理社会的受容に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。さらに,スピリチュアリティは高齢者個々の精神生活全般に影響し,生きる意味や目的,活力,社会的紐帯といった自己の内面性に深く関与する可能性が示唆された。
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