本研究は国内や先駆的な海外の福祉国家における精神障害者のセルフヘルプ・グループ、精神障害当事者個人のpower、セルフヘルプ・グループのempowerment、そしてそれらを支援する家族や専門職者のあり方について、現象学的アプローチ及びエスノグラフィーを用いて明らかにし、我が国の状況と比較し、今後の精神障害者の自立と支援を発展するための基盤とする資料を作成することを目的としている。 本研究の最終年度である平成21年度は、精神障害セルフヘルプ・グループ「すみれ会」(札幌市)でのフィールドワーク(参与観察)を経て、セルフヘルプ・グループのempowermentを考察した。これまでと同様、定期観察以外にも例会やイベントにも参加し、多様な状況のもとでの精神障害者セルフヘルプ・グループを描写した(エスノグラフィー)。また、精神障害リハビリテーションとリカヴァリーとの関連を探究するため、リカヴァリー全国フォーラムに参加し、カンザス大学社会福祉学部チャールズ・ラップ教授から助言を頂いた。さらにWRAP (Wellness Recovery Action Plan)にも参加し、リカヴァリーの観点からセルフヘルプ・グループのempowermentを考察した。一方、障害者を抱える家族に対しては、札幌市精神障害者家族会連合会主催のもと精神看護の実践をまとめ、援助者からの視点を考察した。第12回さっぽろ・こころの健康まつり実行委員長として精神障害者に関する地域啓発活動を当事者とともに行い、広い意味での地域保健福祉活動の視点から検討を行った。本研究で得られた精神障害当事者のpowerと考えられる部分を抽出・分析し、精神障害者の自立と支援を発展するための資料を作成した。
|