研究概要 |
大鹿村の上蔵地区でグループ農業を行なっている楽姓クラブの活動の実態とその背景を参加観察とインタビューにより調査し,次のことが明らかになった。1)楽姓クラブのグループ農業は上蔵地区の女性高齢者を中心とした活動であるが,建物の建造や耕作等の力仕事には男性も協力している。2)グループ農業に利用する遊休農地は,上蔵地区の象徴である福徳寺と大イチョウのそばにあり,グループ農業は村落を挙げての活動という性格を帯びている。3)作物は,土地に適すると認識されている大鹿村特産の大豆(平成中尾早生)や,コキビ,カボチャ等であり,道路の近くには村人や観光客の目を楽しませる様々な花を植えていた。4)農作業に関しては,年長者がより多くの知識をもち,指導的な役割を果たすとともに,自らも積極的に作業を行なう傾向が見られる。5)植え付けや除草には,村内の小学生が授業の一環として参加していた。6)グループが主催する11月の収穫祭は村内の子供や都会の親族,知人たちも参加し,世代間の交流や伝統の継承の場として機能していた。 以上のように,楽姓クラブによるグループ農業の活動は,農作業以外の多様な活動を含んでおり,それらの活動の背景や影響はコミュニティと多面的に関連している。里山の環境を保全し健康資源として利用するには,里山における人問の活動を,自然環境およびコミュニティとの関連において多次元的に検討する必要がある。上述のような性格を持つ楽姓クラブのグループ農業は、こうした条件を満たしており、研究対象として非常に有望であることが確認できた。
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