本年度の聞き取り調査から、地域包括支援センターの高齢者虐待担当者および居宅介護支援専門員が、高齢者虐待を起こしている介護者への介入で困難と考えている家族について新だなタイプが出現してきていることが明らかになった。 家族類型はすでに高崎により5タイプあることが知られている。しかし、今回の調査からこれらの分類に属さない介護者の対処に苦慮している点が明らかになった。明らかなパーソナリティ障害は前述の精神障害を有するタイプに属するが、従来の対応では問題が解決できないタイプが出てきている。人格障害を疑うが確定診断できないタイプ(DSM-IV-TRで境界性パーソナリティ障害と診断できない極軽微なタイプと考えられる)がある。高齢者虐待担当者の軽微なタイプへの対応の課題は、最初の情報収集の段階で正確な情報が得られないこと、そのために正しいアセスメントができないこと、アセスメントが不十分な状態で介入を開始したため問題解決につながらず、困難事例となり虐待が常態化・重度化していることである。 本年度は、地域包括支援センター職員に対して困難事例検討会の開催を呼びかけ、軽微なパーソナリティ障害の疑われる虐待者約10例について、介入技術の分析を行った。分析の結果、虐待者に関する情報収集技術及びアセスメントカ、認知症ケアの知識と技術力に問題のあることが明らかになった。平成20年度後期は、地域包括支援センター高齢者虐待担当者を対象に、情報収集技術およびアセスメント力量向上のための教育プログラムを作成し、研修会を5回開催した。 また、高齢者虐待の通報を受けて虐待者への訪問を実施する担当者に対して、訪問前に介入時の指導実施および訪問終了後の聞き取り調査を実施した。その結果から教育プログラムの有効性について現在分析中である。
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