DSS(the Depression and Suicide Screen)を含む「心の健康度自己評価表」を、うつ状態にある勤労者をスクリーニングする目的で職域において使用した場合の、集団全体の成績、スクリーニングの効率、および既に職域で広く使われている職業性ストレス簡易調査票の成績との関連について検討した。 在宅高齢者についての先行報告と比べると、DSS各項目とも陽性率が高く、集団全体としてのDSS得点は高めになり、原法に従って一次スクリーニングを行った場合の陽性率は5割を超えた。陽性群に1カ月以内に二次面接を行い、構造化面接により抑うつ症状・希死念慮等を評価して精神科的医療の要否を検討したところ、171人中25人(14.6%)が要精神科医療と判断され、それ以外は偽陽性と考えられた。両者で性別・年齢には差がなかった。二次面接不要群、偽陽性群、要医療群の三者で、職業性ストレス簡易調査票の成績を比較すると、精神的健康レベルは二次面接不要群>偽陽性群>要医療群であった。 以上から、住民基本健診での先行報告に比べると職場ではDSS得点が高めになり、偽陽性率が相当高くなることが確かめられ、スクリーニング効率としては課題が残った。職業性ストレス簡易調査票をすでに用いている職場では、DSSまたは心の健康度自己評価表を新たに導入する意義は低いと考えられた。
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