【対象】250床の総合病院で認知障害をケアした経験を持つ看護師20名に対して、平成19年3月初旬から4月末までに1人1回30分から1時間の面接を行い、その後20名のテープ起こしと分析を終了した。 【結果】20名の看護師が認知障害のある高齢者をケアする上で最も判断に困難を感じた場面は、夜勤帯での不穩な高齢者への対応であった。看護師は、入院直後や手術後に生じる患者の不穏に対して、治療への障害、転倒・転落、離棟・離院の危険性を感じていた。また、一方では手術や入院によって高齢者が不安感、不快感、帰宅願望を持ち、それらが不穏の原因となっていることも認識していた。 看護師には【高齢者の生命への責任と意思の尊重との葛藤】が常に存在した。この葛等を解決するために、頻繁に訪室して話を聞く、車椅子の高齢者とともに業務を行う、ステーションで見守る等<安全と安心を提供する対応>を行っていた。しかし、夜間の少ない人数の中で緊急入院や手術といった業務量の増加にともない、高齢者の<安全を維持できない状況>を認識し、看護師だけで高齢者を看ることに限界を感じ始めると、高齢者の<生命への高の協力への意思確認>を行っていた。すでに抑制許可を得ている場合には、ベッド柵、ての抑制、体幹抑制、薬物抑制の順で<抑制による安全確保>を実施し、抑制の許可を得ていない、あるいは抑制を拒否する家族については、夜間連絡をして<家族への来院依頼>を行っていた。しかし、看護師は抑制実施後も完全に安全確保は難しいと考え、また家族への負担を考え夜間来院の依頼を躊躇することもあり、結局看護師が<安全維持への負担感>を感じたまま夜勤を終了していた。これらの結果によって、抑制に至らなければならない看護師の意思決定のプロセス、そのプロセスに影響している要因が明らかとなった。
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