初年度の計画に従い、アスベスト関連NGOの相談内容の内容分析を行った。それに先立ち、アスベストに関する看護分野と活動を明らかにするために文献レビューを行った。 1.アスベスト看護研究レビュー:アスベスト、悪性中皮腫、看護をキーワードに検索を行い、看護に言及している英文21編、和文7編、合計28編について分析した。がん看護では、心理的支援、医療情報提供及び呼吸困難や疼痛等の緩和ケア、産業保健は暴露予防指導、禁煙教育、健康診断実施、小児看護では、学校建物のアスベストの有無確認と暴露予防措置であった。日本の看護研究は6編と、欧米諸国に遅れていることがわかった。 2.アスベスト相談の内容分析:アスベスト関連NGOの相談記録434件のうち、健康に関する400件の内容分析を行った。内容は、(1)建物、製品、業務、環境、地震、家族からの暴露不安(2)暴露した人の健康対策・発症リスクに関する質問や病院紹介依頼(3)過去に暴露し症状が出現した人の不安や病院紹介希望(4)患者の労災申請法、罹患と暴露の関係、治療・ケア、セカンドオピニオンに関する質問や病院紹介依頼(5)遺族からの労災申請法、死と暴露の関係に関する相談(6)飛散事故、(7)アスベスト一般質問に分類された。これらに対する看護として、(1)暴露を心配する人への正しい知識と暴露予防(2)暴露した人への健康対策、とくに不必要な検査の回避や禁煙指導による発症リスク軽減(3)暴露歴があり症状が出現した人への適切な病院情報提示と早期受診促進(4)患者への地域病院情報の提供、疾患・治療・ケアの理解促進、労災申請による経済負担軽減(5)遺族への労災申請による経済負担軽減と、グリーフケア(6)飛散事故における迅速な避難と事後ケアが可能と考えられた。これらの看護実践にはアスベストに関する様々な情報が必要であるため、ガイドライン作成の意義があらためて示された。
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