1. 中皮腫患者の困難調査 悪性胸膜中皮腫患者14名に対して面接調査を行い、データを質的に分析した。その結果中皮腫患者は、(1)症状が速く進む難治性疾患であるため、死の恐怖、死ぬまで治療を続けなくてはならない重圧感、すべなく死を待つ苦しさ、(2)希少疾患であるため、適正な情報不足、限られた医療機関、人々の無理解、同病患者と会う機会が無い孤独、(3)石綿被害者であることによる、怒り、無念などの困難を体験していた。また、中皮腫は進行が速いことから、初めの問題が解決しないうちに次々と問題が起こるため、困難の重層化がみられた。さらに、悪性胸膜中皮腫患者は、医療サービスが不十分だと感じていた。看護師は、中皮腫に関する適性情報の提供、希望者への患者会の紹介、進行が早い中で最良の意思決定を行うための情報と助言、社会保障制度申請の推奨などの支援などが必要と考えられた。 2. 中皮腫患者のケアにおける看護師の困難調査 中皮腫患者のケア経験のある看護師20名に対して半構造面接を行い、質的に分析を行ったところ、《石綿・疾患・治療》、《症状》、《病期ごとのケアニーズ》、《心理社会的苦悩》、《家族のニーズ》《社会保障制度》についての知識不足、《患者中心の意思決定》と《他部門との連携》に関する調整力不足、《患者への接し方がわからない》、《ケアニーズ引き出せない》などのコミュニケーション力不足、<看護師自身の辛い気持ち>が抽出された。このうち、知識不足がさまざまの困難を生んでいたことから、看護師の中皮腫についての知識を高めることが急務であると考えられた。
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