本研究は、精神疾患患者の精神科的エピソードによる最初の受診行動から、医療に繋がるまでの経過に沿って、患者と家族がどのような体験をしているのか、またどのような支援やサービスが患者および家族にとって役に立つものであるのかを明らかにすることにより、今後、精神疾患患者および家族が適切な精神科医療とサービスを早期に受けるための支援体制の構築に寄与することを目的とする。さらに、これらの結果から、精神障害者および家族の生活の質(クオリィティ・オブ・ライフ=以下、QOL)を高め、精神障害者の地域生活を促進するために求められる患者および家族へのケアの方向性を検討する。 今年度は本研究2年目として、 1)患者および家族への精神疾患の初期段階の実態とケアニーズを明らかにするための、面接調査の内容検討・準備を行い、2つの調査を実施した。すなわち、(1)統合失調症を中心とした精神病病態水準の患者の家族に半構成面接を行い、経過を把握すると共に早期ケアの体制やニーズを把握した。(2)統合失調症を中心とした精神病病態水準の患者を治療・援助している保健医療専門職に対する発症早期患者への支援に関する聞き取り調査を通じて、受診・相談に至る患者の初期状態や家族状況を確認し、援助方法やシステムについての示唆を得た。 2)全国141箇所の精神科医療機関看護管理者に質問紙調査を行い、早期ケアの実施状況を把握した。その結果、早期支援に関する取り組みを行っている医療機関が34.4%、行っていないところが63.3%であった。
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