本研究は、精神疾患患者の精神科的エピソードによる最初の受診行動から、医療に繋がるまでの経過に沿って、患者と家族がどのような体験をしているのか、またどのような支援やサービスが患者および家族にとって役に立つものであるのかを明らかにすることにより、今後、精神疾患患者および家族が適切な精神科医療とサービスを早期に受けるための支援体制の構築に寄与することを目的とする。さらに、これらの結果から、精神障害者および家族の生活の質(クオリィティ・オブ・ライフ=以下、QOL)を高め、精神障害者の地域生活を促進するために求められる患者および家族へのケアの方向性を検討する。 今年度は本研究3年目として、統合失調症を中心とした精神病病態水準の患者の家族に半構成面接を行い、精神疾患の初期段階の経過を把握すると共に、精神医療・精神保健看護領域での早期ケアの体制やニーズを分析・把握した。対象者は24名平均年齢56.7歳、内訳は父3名・母20名・伴侶1名、患者は平均年齢26.7歳、男13名・女10名であった。 その結果、(1)本人の受診までに長期間を要した群と、(2)比較的早期に受診した群とに分けられた。(2)の群の家族は、患者の幼児期あるいは学童期より違和感や問題を抱えていたケースと、思春期(10歳代後半)以降に違和感をもったケースとに大別された。両ケースともに、家族は情報を得るために多くの労力をかけ、適切な診断や治療を求めて医療者の言動に振り回されたり傷ついたりしており、一部には医学的な問題ではない、あるいは統合失調症ではないという医療者の言辞に翻弄されていた。このように、現時点でも安定した医療サービスは得られないことが多く、患者へのケアを家族が多く担っていた。
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