研究概要 |
本研究では2型糖尿病患者のための運動の習慣化をサポートする集団力学アプローチの効果について, 身体運動および身体活動量の増加に影響する動機づけ, 感情, コミュニケーショに関連する要因および能力などの観点から検証を行った。対象は総数大学生65名で, コントロール群(C群 : 18名), 介入群(身体活動促進のためのグループワークのみの群(G群) : 16名, グループワークおよび運動の実践を行う群(EG群) : 16名, 運動のみ行う群(E群) : 16名)にわけて, それぞれの変数を比較した。身体活動量に関しては, 歩数及び日常生活動作量の何れも介入前後でやや低下傾向が認められたが, 群間差はなかった。運動の動機づけのレベルは, 非動機づけ, 外的調整, 取り入れ的調整, 同一視的調整, 内発的動機づけの5段階あるが, 同一視的調整(自分にとって重要であるから運動をする)において, EG群がその他の群に比べて有意に高くなった(p<0.05)。運動の自信感はG群がC群に比べ介入後低下する傾向を示した(p=0.9)。また理論的に動機づけ促進効果が考えられる集団凝集性(グループ一体感)は, 何れの介入群もC群と有意差はなかったが, 対人距離は何れもC群よりも有意に縮小しており(p<0.05), 回を重ねるごとにグループメンバー間の心理的距離は縮まることが明らかになった。また検証途中であるが, 画像分析ではG群とEG群のコミュニケーションに関わるパーソナルスペースについて比較したが, 介入4回目はEG群の方が有意に縮小していた(p<0.05)。 以上から単にグループワークを行うのみでは自信は低下し, 運動のみでは動機づけも十分機能しないが, グループワークと運動の実践を組み合わせると動機づけ効果が高まることが明らかになった。さらに運動とグループワークの組み合わせによりパーソナルスペースも縮小し親近感を促進する集団力学が働く可能性が示唆された。
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