研究概要 |
免疫学的記憶とは過去に出会った抗原に対してより早く、より大きな免疫応答が起こる現象でワクチンの基礎となる。記憶T細胞の特徴としてはnaiveなT細胞よりも早く増殖することが知られているが、そのメカニズムについてはまったく知られていない。そこで記憶反応における抗原特異的なCD8T細胞の増殖を調べるため、Rockefeller大学のSteinman博士との共同研究により、in vivoで樹状細胞特異的にモデル抗原(OVA蛋白質)を標的する方法(in vivo antigen delivery system)を用いて抗原特異的記憶CD8T細胞を誘導する実験系を確立した。樹状細胞に特異的に発現するendocytosis receptoe,DEC205に対する抗体にOVA蛋白質を融合したキメラ抗体を、CD40抗体(樹状細胞を活性化する補助刺激)とともにC57BL/6マウスに腹腔内投与すると、OVA特異的な記憶CD8T細胞が誘導され、これらの記憶T細胞は抗原に出会うとnaive T細胞に比べて著しく早く増殖してさまざまなサイトカイン(IL-2,IFN-γ,TNF-αなど)を産生し、高い細胞傷害活性を有してOVAを発現したリステリアに対して強い感染防御能を示した。さらに記憶T細胞はnaive T細胞に比べてIL-18Rを高発現することに注目して記憶反応におけるIL-18の役割について解析した。IL-18は抗原提示の際に樹状細胞からT細胞とのシナプス間隙に分泌され、IL-18欠損マウスでは記憶CD8T細胞の増殖が野生型マウスに比べて遅くなることがわかった。さらに記憶CD8T細胞から高産生されるIFN-γが、樹状細胞からのIL-18産生を促進して、記憶T細胞と樹状細胞間でIL-18-IFN-γ-シグナルループが形成され、このシグナルループが記憶T細胞の増殖加速において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
|