研究概要 |
LTB4がアレルギー性の気道反応に必須であるかどうかを直接証明するために、LTB4を全く産生しないLTA4 hydrolase knock out (LTA4HKO)マウスを用いて喘息モデルを作成し、コントロールの野生型マウスとの比較検討をおこなった。既に申請者らのグループにより確立されたIgE-マスト細胞依存性喘息モデル(J Clin Invest1996;97:1398-1408.)を用い、卵白アルブミン(OVA)特異的IgE抗体の受動感作を行った後にOVAを吸入暴露し、48時間後に気道反応を評価した。OVA抗原特異的IgE抗体の受動感作後にOVA抗原を吸入させたところ、野生型マウスに比べ、LTA4HKOマウスは有意に低い気道過敏性を示し、肺内の好酸球の数、杯細胞の過形成の程度も低下していた。次に申請者らのグループにより確立されたIgE-マスト細胞非依存性喘息モデル(J Exp Med1997:186:449-454)を用い、OVAの腹腔内感作の後、吸入暴露を行い、気道反応を評価した。気道過敏性は吸入メサコリンに対する気道抵抗の上昇をdose-dependentに測定した。野生型マウスに比べ、LTA4HKOマウスは明らかに低い気道過敏性を示し、気管支肺胞洗浄液中の好酸球数およびIL-4,IL-5、IL-13などのサイトカインも低値を示し、気道周囲の好酸球性炎症および杯細胞の過形成も低下していた。以上より、LTB4はIgE依存性、非依存性のいずれのアレルギー性気道反応においても反応惹起に必須であることが示唆された。 次にアレルギー性気道反応を惹起するのに必要なLTB4の産生細胞として、マスト細胞が重要な役割をはたしているかどうかを明らかにするために、以下の実験を行った。申請者らのグループが確立した方法を用い(J Immunol.2004;172:6398-406)、野生型マウスから骨髄細胞を分離し、IL-3の存在下で培養することにより、マスト細胞を樹立した。LTA4HKOマウスに野生型マウスから樹立したマスト細胞を移植した後、OVA特異的IgE抗体の受動感作とOVAの暴露を行い、IgE-マスト細胞依存性喘息モデルにおいて、移植した野生型マスト細胞から分泌されるLTB4によりアレルギー性気道反応が野生型と同定度まで回復するかどうかを検討した。野生型マスト細胞を移植したLTA4HKOマウスは、IgE抗体の受動感作とOVAの吸入暴露の後に、野生型マウスと同程度の気道過敏性を示した。以上より、マスト細胞-IgE依存性のアレルギー性気道反応においてはマスト細胞からのLTH4分泌がアレルギー反応に重要な役割を担っていることが示唆された。一方、IgE-マスト細胞非依存性喘息モデルにおいては、野生型マスト細胞を移植したLTA4HKOマウスのアレルギー性気道反応の回復は得られなかったことから、このモデルにおいてはマスト細胞からのLTB4分泌だけではアレルギー性反応を惹起するには不十分であり、肺胞マクロファージや他の細胞(好中球など)からのLTB4分泌が必要である可能性が示唆された。
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