平成19年度、これまでモルモットを用いて作製してきた中耳真珠腫実験モデルをラットで作製する実験を行った。今後の課題である真珠腫増殖に関連する遺伝子の同定を行うため、再現性のある安定した実験モデルをラットで作製することが今年度の重要課題であった。 1.実験方法 生後6〜8週齢のウィスター系ラット10匹を用いた。全身麻酔後、左側中耳骨胞を手術用顕微鏡下に開放し、骨胞内の粘膜をダイアモンド.バーを用いて可及的に除乱去した。予め採取した耳介基部の皮膚(2×2nm)を全層て結合組職側を下に骨面へ移植した。開放した骨胞を閉鎖し、創面を縫合した。 皮膚移植3週後、全身麻酔後に再び左側中耳骨胞を開放した。10匹のラットを真珠腫群とコントロール群に2分した。真珠腫群5匹では皮膚嚢胞の形成を確認した後に嚢胞壁を破り、嚢胞内の表皮剥屑物(debris)を可及的に掻き出して上皮下の肉芽組織内布に散布した。コントロール群5匹では嚢胞壁を破らずに骨胞を閉鎖し、創面を縫合した。 左側中耳骨胞の再開放後4週目に、動物をペントバルビタールの致死量投与により屠殺し、左側頭骨を摘出した。 2.結果 真珠腫群で2匹、コントロール群1匹で感染などのため、結果から除外した。真珠腫群では3匹とも骨胞内を占拠する真珠腫の形成が確認された。コントロール群では4匹とも皮膚嚢胞の形成は確認されたが、いずれも増殖傾向は認められなかった。 3.考察と今年度への課題 実験結果から、これまでモルモットを用いて作製してきた中耳真珠腫実験モデルをラットで作製することは可能であった。再現性のある安定した実験モデルを得るためには感染などに注意する必要があった。 今年度はラットでの実験モデルを使用して真珠腫群とコントロール群の間で、摘出した組織のマイクロアレイ解析を行い、真珠腫増殖モデルにおいて特異的に発現している遺伝子を見つけることを目標とする。
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