中耳真珠腫はその強い増殖性から周囲の骨組織(聴器)の破壊を伴い、高度の難聴、めまい、顔面神経麻痺、頭蓋内合併症など重篤な後遺症をもたらす疾患である。しかしこれまで雨現性のある重物実験モデルがなく、中耳真珠腫の増殖機序に対して特異的な発現を示す因子は報告されていなかった。 本研究ではこれまで我々の行ってきたモルモットを用いた真珠腫実験モデルを、ゲノム解析が終了した動物であるラットにおいて作成することに成功した。生後6〜8週齢のウィスター系ラット11匹において、耳介皮膚の中耳骨胞への自家移植により、死亡や感染による脱落例2例を除いて全例で真珠腫モデルガ認められた。 ゲノム解析が終了した動物であるラットにおいても真珠腫実験モデルを作成できたことは今後の研究発展の見地から重要と考える。モルモットにおい研態的および病理組織学的に強い増殖性を示した真珠腫群はラットにおいても同様に強い増殖性を示した。またモルモットにおいて作成された真珠腫はすべて嚢胞(closed)型であったが、ラットにおける今回の実験では真珠腫群(増殖モデル)、コントロール群を含めてclosedとopen typeがほぼ同じ割合で形成された。この原因として動物種の違いによる解剖学的な差、あるいは真珠腫の成因の一因として考えられている、創傷治癒機転に違いがあった可能性がある。同一の型の真珠腫モデルで増殖過程に発現する遺伝子を比較検討するため、今後はよりヒト真珠腫に近い嚢胞型モデルの作成頻度を向上させる必要がある。 今回の検討では、マイクロアレイ解析に十分な量の組織採取が困難であったため、最終的な遺伝子解析の結果をまとめることができなかつた。現在、2検体の組織を合わせて解析を行っており、明瞭なRNAのバンドが見られている。今後の学会や論文発表で群細が明らかにできると思われる。
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