研究概要 |
肝臓を生体外で再生させるためには,増殖・分化ポテンシャルの高い細胞を用いて,立体構造を形成させることで肝細胞を組織として機能させる必要がある。そこで本研究では,(1)増殖・分化ポテンシャルの高い細胞として,小型肝細胞(Small Hepatocyte;SH)と骨髄間葉系幹細胞(Msenchymal stem cells;MSC)との共培養,(2)立体構造を形成させるための細胞外環境の付与,を組み合わせることで,立体的なミニ肝組織の構築およびその肝組織形成機序の解明を目的とした。 前年度の続きで,GFP発現ラット由来MSCとSHとの共培養の検討を行ったところ,MSCのGFP発現が弱く,追跡が難しいことが判明した。そこでDPPIV(-)雌ラットから単離したSHとDPPIV(+)雄ラットから単離したMSCとの共培養実験を行った。これはMSCが肝細胞・胆管上皮細胞どちらかに分化すればDPPIVを発現し,追跡可能と考えたためである。増殖能の評価としてBrd-U index(BrdU positive細胞数/コロニーの全細胞数x100%)による解析を行ったところ,SH単独では34.4%だったのに対し,共培養では54.5%と有意に高かった。またコラーゲンゲルによるサンドウィッチ培養を30日間行うと一部に管腔構造を形成した。そこでDPPIV活性染色を行ったが,発現率は1%未満であること,またDPPIV陽性細胞はCK19陽性であったことから,SHがMSCとの相互作用により胆管上皮細胞へ分化した可能性が高いと考えられる。 本研究より,患者から採取した肝組織より小型肝細胞を分離培養し,同患者から採取した骨髄間葉系幹細胞を共培養,増殖させることで,細胞数の確保とその増幅に限界があった小型肝細胞の臨床応用の可能性が高まると考えられる。しかし,細胞間相互作用のメカニズムと細胞融合の有無に関する解析は未解明であり,今後も解析を続けていくつもりである。
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