研究概要 |
本態性高血圧の発症機序は今のところ明らかにされていない。本態性高血圧症は心疾患,脳卒中および腎不全などのリスクファクターであり,その発症機序解明は極めて重要な課題である。当該申請者はこれまでの研究成果を基に「本態性高血圧の発症は循環調節中枢における炎症反応異常に起因する」という研究仮説を立てた。本研究ではこの仮説を検証するために,本態性高血圧症の動物モデルである自然発症性高血圧ラット(spontaneously hypertensive rat:SHR)の循環調節中枢(延髄孤束核)で異常発現している炎症反応関連分子のスクリーニングを行い,さらに同定分子や関連分子の機能的特性についても検討した。その結果,炎症性サイトカインIL-6,IL-10およびIL-10 receptor等に遺伝子発現異常が見られた。このうちIL-6について蛋白質の局在を免疫組織化学的手法により調べたところ,孤束核尾側部の神経細胞集団に主として発現していることがわかった。さらに麻酔下ラットの孤束核にIL-6を微量注入したところ血圧反射の抑制が見られた。以上より循環調節中枢における炎症性分子の異常発現は高血圧発症と関連している可能性が示唆された。次年度は本年度にスクリーニングされた炎症反応関連分子の遺伝子および蛋白質発現についてさらに詳しく調べ,また,ウイルスベクターを用いて慢性的に標的遺伝子を過剰発現したときの循環反応を調べることにより,本態性高血圧発症メカニズムについて更に深く検討していく。
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