研究概要 |
全世代の消費配分が決まれは各世代の効用も自動的に決まるとき,効用は家父長的であるという。他方,各世代の効用が自己の消費量のみならず将来世代の効用とともに増加するとき,世代間で非家父長的な利他性が存在するといい,効用は非家父長的であるという。このように,世代間め効用の相互依存関係には二つの形態があるが,両者の間の論理的関係は必ずしも明らかではない。特に,各世代の非家父長的が与えられたとき,それを家父長的形式に表現しなおすことが可能か否かという問題がRay[Journal of economic Theory 41:112-132,1987]によって提出されていたが,これまで未解決であった。我々は,このRayの表現問題を肯定的に解決した。その研究成果は,査読付きの国際学術誌Advances in Mathematical Economicsの第11巻に掲載された。主要な結論は以下のとおりである。第一に,非家父長的効用関数がある種の有界性の条件(各点有界性)を満たさなけれはRayの表現問題に解が存在するとは限らないことを反例で示した。第2に,各点有界性を満たす非家父長的効用関数が与えられたとき,Rayの表現問題に解が存在することを示した。非家父長的効用関数に内臓されている単調性に注目し,Rayの表現問題の解の候補からなる家父長的効用関数の空間が完備束であることを利用したことが,Rayの表現問題の解の一意性を示すことに成功した。この結果は,有限人から構成される社会における経済主体間の効用の相互依存関係を扱ったHori[Japanese Economic Review, 2001]の研究成果を無限視野経済における世代間の効用の相互依存関係の分析に拡張したものとみなせる。
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