研究概要 |
哲学者デレク・パーフィットの指摘以来、大多数の人口が貧困に喘ぐ社会状態がごく僅かだけ少数の人々が豊かな生活を営む社会状態より望ましいという「反直観的な結論」を回避することが、社会的選択理論において、社会状態の評価基準に課せられる基本的な要請となっている。ところが、パーフィットの理論は十分に説得的ではないという議論が最近の倫理学研究においてなされている。(Tannsjo,T., "Why We Ought to Accept the Repugnant Conclusion", Utilitas 14,339-359,2002.)これを受けて、本研究計画代表者は社会的選択理論の立場からパーフィットの「反直観的結論」概念を再検討した。そしてShinotsuka, T. "Remarks on Population Ethics" in Prasanta K. Pattanaik, Koichi Tadenuma, Yongsheng Xu and Naoki Yoshihara (eds.) Rational Choice and social Welfare: Theory and Applications, Springer, pp.35-41, 2008.(査読付き)において、(パーフィット理論に批判的な論者でも受け入れるように)反直観的結論回避の要請をさらに緩和したとしても、社会的選択理論で広範に承認されている公理との矛盾は回避できないことを論証した。
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