研究概要 |
大学ベンチマークは、少数の比較対象となる大学を取り上げて,指標を作成して定量的あるいは定性的な比較を行う。これによって,個々の大学の特性を明らかにし,個別大学の改革の基礎的な知見を提供することを目的としている。このため、インターネットなどの公開情報や資料などによるベンチマークのためのデータを収集するとともに、イギリスと中国とアメリカでの実地調査に基づき、各国の大学のベンチマークの実態を比較検討した。各国では、それぞれの歴史的経緯から様々に異なるベンチマークを実施している。たとえば、イギリスでは学科目ベンチマークとして、定性的な指標のみであるのに対して、アメリカでは、Institutional Research(IR)や戦略的計画と関連して、定量的な指標によるベンチマークが盛んに実施されている。こうした点を考慮して、ベンチマーク指標について、定性的および定量的な両面から、検討した。特にベンチマークでは、少数の教育機関について、比較するため、指標が適切ではない場合、あるいはデータや測定に問題がある場合には、間違った結論に導かれやすい。このためアメリカでは、複数の大学によるコンソーシアムや団体を通じて、相互にデータを交換することで、ベンチマークのデータを正確にするよう努めている。これらの点に十分に留意しつつ、沿革・規模・学生・スタッフ・財政・授業料・奨学金について、指標を作成し、これに基づくベンチマークのモデルを作成した。これを用いて、アメリカ・イギリス・中国・日本の4カ国の9大学を選定し、それらの個別大学のベンチマークを実施した。これによって、規模などでは、比較的似ているのに対して、授業料・奨学金や財政構造には、大きな相違があることが明らかにされ、具体的な大学のベンチマークに有用なモデルを提示することができた。
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